唯々諾々 (しません)

冷静な議論ができる方からのマサカリは大歓迎です。

"コンサル本"やレポートの書き方本の決定打 (多分)

タイトルは「凡百のコンサル本や書き方/考え方本読むなら黙ってこれ買え」にしようかと思いましたが戸田山先生の名誉にも関わるので少し抑えました (利害関係は皆無です)。コンサル本とかに全部目を通したわけでもないので...

結論から申し上げますと、コンサル本、書き方/考え方本を一冊でも買った経験のある方、もしくは今後Twitter文字数以上の文章を書く機会が一度でもある方は本当に黙ってこちらの本をご購入ください。アフィが嫌な方はググってでもいいので買ってください。コピペ用:「 論文の教室 戸田山和久
1400+税 円です。下手なランチより安いです。黒歴史サイトを運用したい低年齢層から嫌々レポートを書かされる大学生、社会人まで、本当に万人に自信を持っておすすめできます。

 

タイトルは「論文の教室」とはなっていますが、実際はメールを除く*1ほぼ全ての文章に活かせる文章の書き方と非常に明快な思考様式 (文章アウトラインの作り方) を紹介されています。噂のパラグラフ・ライティングも当然1章を割いて説明しています。

しかしこの本の本当にすごいところはそんなところではなくて、「この本自体に中毒性があり、読ませてくる」というところにあります。ご経験ありませんか、この手の書き方本やコンサル式思考様式本を買ったはいいし、言いたいことはわかるんだけどなんせ読む気力がな〜...... からの積ん読。私はあります。本職のある社会人ともなればなおさらでしょう。

私はこの本の最も古い版と高校1年から10年の付き合いですが、おそらく5回は読み返しています。漫画を読む感覚で読めちゃうんです。これは戸田山先生自身も意識されており、まえがきに

読者の皆さんには本書を最後まで読み通してもらいたい。そのために私は、できる限り読み物としても楽しい本になるように心がけた。これが、本書の第二の独自性と関係する。*2

と書かれています。ちなみにこの引用部の文章もまだ硬く、その本性を表していません。本文はもっとはっちゃけており、作文ヘタ夫くんが1本レポートを完成させるまでの涙ぐましい物語です。

どんなに良いことが書いてあっても読まれない本は (少なくとも大衆書としては) 無いものと同じです。しかし読ませたところで中身が空っぽでは時間を返せという気分にもなります。その点でこの『論文の教室』は内容も詰まっておりかつ読み通せる、おそらく本邦無二の書き方指南書です。

とりあえずまえがきと第1章だけでも良いので読んでください。読んでなお文章の書き方本としてゴミだと思ったならば、批判*3のコメントをこちらに頂ければ、私が読んでその主張が合理的と感じた場合*4にはAmazonギフトカードで1500円分お返しいたします。その際はお送りいただいた文章の一部を経緯とともに戸田山先生にお送りする可能性もございます。ご同意の上ご送付ください。

 

メリットばかり書くのもアンフェアなので個人的に改善点だと思っている部分も最後に書いておきます。

  1. 本質的でない部分で出てくる単語が地味に難しい or 専門的である。
    例えばヘタ夫くんは動物に権利を認めるかどうかという昨今流行りの *5 テーマでのレポート作成を行うことになりますが、それに応じてピーター・シンガー (人名) やモードゥス・ポネンス (論証形式の例) など、聴き馴染みのない単語で、かつその後の説明にそこまで必要でない単語が少し出てきます。
    私は構わないのですが、世の中には知らないカタカナ語が出てくるとそこで本当に思考が固まるという人が少なからずいらっしゃるようです。彼らにこそこの本が届いてほしいというのが個人的に思うところですので、哲学者としての戸田山先生にはわずかばかり我慢いただけますと個人的にはより売れると思います (キラーフレーズ)。
  2. 真面目な話ししてるときに急に話が飛ぶ部分 (好き嫌いが分かれる)
    このブログを書くために最新版を買って久々に読んだのですが、大学と大学院で散々「結論から書け一言で言えるだろ一行で書け」と躾けられてきた"成果"か、ペイ・フォワードのくだりは少しイラッとしました (昔はそんなことなかった)。
    他のところは今のところ気にならないですし、それがこの本の特徴でもあるので悩ましいですね... (結論からの逃げは論文では禁止ですがここはブログですのでご寛恕いただき、これにて今回の記事を終わりとさせていただきたいと思います ())

*1:メールについてはそれまた色々めんどくさいので戸田山先生の教員人生40年で培われたアノ手コノ手で相手を動かすのメール術大公開が待たれるところです (割と本気で待っています)。

*2:戸田山和久 (2022年)『最新版 論文の教室 レポートから卒論まで』、NHK出版、p. 11

*3:非難ではない。

*4:作文へタ夫くんなんてベタだ、オヤジギャクが寒くて光熱費が平年より上がった、などの理由では受け付けませんのでご了承ください。

*5:第一版のときはそんなこともなかった... なちゅかしぃ